熊谷陣屋

2012.3.7

先日小照先生の新内を聞いた後 ふと入手した切符で 国立大劇場 一谷嫩軍記

このところ 平家物語のDVDを見ているので 細かいところが解ることがあって舞台が近づく

一幕 義経の義父になった平時忠が出てくると 若い娘を嫁にやるのが惜しくて 年増の娘をやったが義経は喜んだ というのはここだ と思う。

三幕 熊谷陣屋 今までは 登場人物の中には ちょっとはしょって話が進むとよいのに 等と思ったものだが それぞれの事情がのみこめ 初めてゆっくりと話のすみずみまでを楽しむことが出来た。

 

平成6年 虎ノ門のギャラリー日鉱で ”シェイクスピアの世界を そのII” という展覧会をした時 

会社の社長さんが 豪華なパーティを開いて下さった。

シェイクスピアの劇と私の書を結びつけて たとえば 凌 という字は先生の御本には出てこない字 だったが 書としての出来がよかったので  ”私が良いと言えば良いのです” とおっしゃって 訳を凌を使う言い回しにして下さった 小田島雄志先生

その頃の事情を御存じで ホテル以外の場所でのお客のパーティには出ないことにしているとおっしゃっていらした村上信夫先生も出席してくださった。

父と私はいろいろなことで一緒にお団子状態の底に長くいた時だったが

父が挨拶で ”16年は一昔、夢だ ああ夢だ” と言った。

 

今日 團十郎丈の背中を2メートルほどの近さで見ていてその頃の父の無念さ 切なさを思った。

直実は法然上人の導きを得たそうだが 短い花道で ハッと求道者の澄んだ目つきになり ホラ貝の音に本能的に武士の反応を示し もだえながら幕に入る という そこだけで十分一場面になる名演。

長い年月同じ舞台を何度も見る幸せ 等というと申し訳ないような 観劇だった。

3月7日  


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